高学歴でも宅建不合格!?は大人の勉強の仕方を知らないから

宅建に独学合格

毎年多くの宅建受験者のサポートをしていますが、いわゆる最難関の大学出身者でも不合格(しかも何度も)する光景を見てきました。

一般的に考えれば、基礎学力が高いと思われる人たちがポロポロ不合格になるのは不思議なようですが、これには理由があります。

それは大学入試と社会人の勉強の仕方は違う!ということです。

まず何が違うかと言えば、大学入試の場合は勉強に専念できますが、社会人の場合は働きながらの勉強になる、ということです。

私は元塾講師で、東大や医学部を受験する生徒の指導にあたってきましたが、最難関大学の問題も突き詰めればあるパターンに分類できますので、受験生は時間をかけてこのパターンを身につければ合格できます。

宅建の学習のパターンは、これらの大学に合格するための学習パターンと比べると大分簡単です。

しかし、「勉強ばかりできない!」という点に違いがあり、高学歴でも不合格!となります。

そしてこの不合格の理由の2つ目は、大学入試の時より記憶力が落ちているということです。

年度にもよりますが、宅建には年齢が上がると合格率が下がる傾向があります(20代未満はほとんど受験生がいないため、20代からが対象)。

平成30年度宅地建物取引士資格試験の結果について


私も宅建受験を経験しましたが、まず最初に驚いたのは暗記力の衰えでした。

その時に、大学入試と全く同じ勉強の仕方では合格できない…と感じ、大人には大人の勉強をする必要性を強く感じましたので、この大人の勉強の仕方についてご紹介します。


単純な記憶力勝負では子供には勝てない



宅建に限らず、単純な暗記・記憶力勝負では、若い世代や子供に勝つ事は非常に難しいです。

しかし、大人だからこそできる覚え方をすれば、勝つ事ができますし、むしろ大人になってからは別の方法で物事を覚える必要があるのです。

子供の脳はいわば真っ白なキャンバス状態ですので、意味を持たない事も平気で覚えられます。

私の子供の頃がまさにそうだったのですが、5歳で百人一首を全部覚えました。

もちろん子供なので歌の内容は全く分かっておらず、ただの音として覚えている状態です。

この例はさすがに年齢が低すぎますが、学生時代の勉強であればパラパラと単語帳を眺めるだけでもそれなりに頭に入ってくる…などという経験をお持ちの方も多いと思います。

しかし、私も大人(20代半ば)になってから英語の学習をしましたが、このやり方だけでは明らかに覚えられる量が減っていました。

それでも大人に合った勉強の仕方をすれば、それを補うことができます。


記憶の種類を知れば、大人の勉強法が分かる

長期記憶と短期記憶



大人に合った勉強の仕方を理解するうえでは、記憶の種類を理解する必要があります。

記憶の種類には『短気記憶』『長期記憶』があります。

『短期記憶』とは文字通り短期の記憶で、時間にして数十秒から数十分という時間に保持される記憶の事です。

身近なところではある一定の時間だけ表示される認証システムの数値など、特に意味はないけど短期的に数値などを覚える時に使う記憶です。

一方、『長期記憶』とは数時間から数十年の期間にわたって保持される記憶の事です。

物事を『覚える』から『忘れないようになる』というのが、まさに『短期記憶』が『長期記憶』になる過程です。


長期記憶にも複数のパターンがある



そして長期記憶にもいくつか種類があります。

『手続き記憶』・『意味記憶』・『エピソード記憶』です(本当は4種類あるのですが、勉強の仕方にあまり影響がないので割愛します)。

『手続き記憶』とは体を使っていく記憶の仕方で、音を聞く、自転車に乗るなど人が一番最初に物事を覚える方法です。

言ってみれば先ほどの百人一首の例もここに当てはまります。

次の『意味記憶』とは、簡単に言ってしまえば、言語を中心とした学習で得た、言葉の知識全般のことをいいます。

分かりやすく言えば、「1年とは地球が太陽のまわりを一周する時間」という辞書のような覚え方です。

ちなみにこの覚え方は10歳がピークと言われています。

そして最後の『エピソード記憶』が、ストーリーとして覚えるような記憶法にあたります。


人の感情に強烈に残るのが『エピソード記憶』



昔、喫茶点で彼女に別れを切り出されたな、真夏の野球場で最後まで声を出して応援したな…など記憶として残っているものは、『エピソード記憶』がほとんどです。

この『エピソード記憶』が強烈に残るのは、人の感情と深く結びついているからです。

大人になれば短期記憶はもちろんのこと、手続き記憶や意味記憶もどんどんと弱くなっていきます。

しかしその反対に様々な経験を重ねていますので、自分がよく覚えているもの(感情と結びついているもの)と関連させて覚えていくという事ができます。

例えば取り消しと解除の違いを、言葉の定義から覚える(意味記憶)として覚える事もできます。

しかし、彼女と付き合う段階で、他にも男がいた事を知っていたら、付き合わなかったかもな・・・が取り消し(契約の時点で問題あり=取り消し)。

付き合ったけど、1年後に他に好きな人ができたので別れよう…という事であれば解除(契約自体は問題がないので有効、あとはどう保護するか)です。


ストーリーで覚えるとエピソード記憶になりやすい

ただの暗記はすぐに忘れる!



人は忘れる…という事例でエビングハウスの忘却曲線の例を出しましたが、これには1つ落とし穴があります。

それは「何を記憶して、その再生率を調べたのか?」という「何」が、「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(rif、pok、 tazなど)という事です。

試験勉強をした事がある人なら実感があると思いますが、ただ単に覚えた事は非常に忘れやすいです。

単語や漢字を無意味に書いて覚える、数式をただ数字と文字の羅列としてだけ覚える…などはなかなか覚えられないうえにすぐに忘れてしまいます。

例えば、球の体積を求める公式や、リトマス試験紙の赤が青に変わるのは何性か?と聞かれて即答できる社会人は少ないと思います。


『覚えやすい覚え方』は『忘れにくい覚え方』



その一方で、先生が説明してくれた分かりやすい覚え方や、覚えやすいように自分で考えて覚えた事は、比較的時間が経っても覚えているという経験をお持ちではないでしょうか。

例えばウサギとカメの話ではどちらが勝ったか?という事は、長い年月が経ってもほとんどの人が答えられるのではないかと思います。

これはなぜかといえば、ウサギとカメの話はストーリーとして覚えているからです。

ウサギとカメのストーリーは以下のようなものです。

①ウサギとカメが競争する

②ウサギが断然リードしていたが、途中でウサギは昼寝をした

③ウサギが寝ている間もカメは歩いていたのでウサギに勝てた


このようにストーリーで覚えた事は非常に忘れづらいという性質があります。


ストーリーで覚える(宅建の場合)



私の場合、宅建の学習は漫画から入りましたが、そのおかげで大まかなストーリーは頭の中に入っていました。

そしてテキストで詳細を学ぶときにも、その大まかなストーリーが頭にあった事で、普通に覚えるよりはかなり覚えやすくなっていました。

ちなみに年度は異なりますが、私が読んだ漫画は以下の漫画です(【改正民法に対応】うかる! マンガ宅建士入門)。



ストーリーで覚えることは非常に効果的なのですが、例えば宅建業の定義でやってみましょう。

宅建業の定義としては、『自ら宅地建物の売買・交換を業として行う、宅地建物の売買・交換・賃借の媒介・代理を業として行う』などとなりますが、いまいちイメージがつきません。

イメージがつかない場合は、具体的な例を考えてみる!という事が有効な覚え方になります。

社会人の方なら、転勤で自宅を貸す、あるいは売る事になった人が周りに1人くらいはいるのではないでしょうか(いない場合は該当するあの人がもし転勤になったらと仮定してみましょう)。

昨日まで普通に生活していた人が、家を売る、貸すために、急に宅建業という免許がいるはずがありません。

つまりこれと似たような状態(自ら貸す、あるいは『業』にならない=不特定多数と反復継続した取引をしない)は免許が不要だろうという発想ができます。

これがストーリーで覚えるという事であり、私が宅建について教える時も出来る限りそうやって教えています。


年齢によって教え方は変わる



実際に10歳までは意味記憶が優勢なのですが、それ以降はエピソード記憶が有効になります。

私も様々な年齢の生徒に教えた経験がありますが、学年によって教え方は変わります。

これは小学生Aと中学生Bと学年が違う別の生徒場合だけでなく、小学生Aと中学生Aという同じ生徒でも学年が上がると教え方を変える必要があるという事です。

小学生であればエピソード記憶より、意味記憶でどんどん覚えさるのと、時間があるので反復が中心になります。

そして復習するかどうかは先生の好き嫌いで判断をするところが大きいので、一緒に遊ぶ時間を増やしたりしてとにかく仲良くなりました(おかけげポケモンや遊戯王などのカードゲームにかなり詳しくなりました)。

高校生になれば知っていることも増えるので、恋愛などの人間関係や時事ネタなど、バリエーションを増やして説明することができます。

社会人に教える時であればなおさら色々な話題を使えます(というより使わないと効果的な学習支援はできません)。

このように年齢によって有効な学習方法は様々ですので、参考にできる部分をご活用ください。



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