忙しいビジネスパーソンであれば、通勤中や隙間時間は宅建の貴重な学習時間です。
私の周囲でも通勤+αの学習で合格した人もポツポツいます。
スマホを片手に宅建の学習ができる内容になっています。
ココで扱う意思表示の範囲はこの10年で9回出題されています。
中には難問もありますが、ポイントをおさえておけば正解できる問題もありますので、以下のポイントはおさえましょう。
①契約当事者同士の契約の効力
②契約の効力を第三者に対抗できるか
意思表示とは、その名の通り「売りたい!」、「買いたい!」などの自分の意思を表示することです。
そしてこの売りたい(申込みの意思表示)と買いたい(承諾の意思表示)が合致すれば、売買契約が成立します。
つまり口約束でも約束は成立するのです。
勘違いするケースがありますが、法律上、売買契約が成立するためには契約書の作成は必要ありません(意思表示の合致があれば約束は結ばれている)。
ではなぜ契約書を作るのかと言えば、この口約束を証拠として残すためです。
これから扱う内容は、まずこのことが前提にあります。
心裡留保
心裡留保の基本的な考え方
心裡留保(しんりりゅうほ)とは自分の真意ではないと知りながら行う意思表示…というと難しい表現になりますが、簡単に言えば冗談のことですが、これは原則有効です。
具体的には、相手方が本人が冗談で言っていることを知らず(善意)、さらに、十分に注意しても知ることができなかった(無過失)場合は、契約は有効になります。
イラストのように本人が冗談で言っていること(土地などを1億円で売る!)を知らず、知ることができなかった場合はこの契約は有効になります。
無効になるケース
しかし、相手の言っていることが冗談だと知っている場合(悪意)、この契約は無効になります。
冗談で言っている…と知っているわけですから、そりゃあそうだろ…という感じですね。
また冗談だとは知らなくても、十分に注意をすれば知ることができた場合(善意有過失)も、この契約は無効になります。
善意の第三者には無効を主張できない
善意の第三者という言葉、これは権利関係では非常によく出てくるのですが、ある事実について知らない第三者です。
先ほどの善意無過失・有過失とは異なり、過失の有無を問いません。
心裡留保については、この善意の第三者については契約の無効を主張できない…とありますが、これも簡単に言えば、冗談を言った人は善意の第三者に負けるということです。
善意?悪意?ここでいったん整理
善意、悪意など日頃はあまり使わない言葉が出てきたので、ここでいったん整理します。
イラストにここまでの内容を整理しましたので、ややこしいな~と感じている方はご確認ください。
また無効という言葉が出てきました。
これは取消とは意味が違いますので、これについても整理しておきましたので、ご確認ください(都度、このイラストは使わせて頂きます)。
虚偽表示
虚偽表示の基本的な考え方
心裡留保が一人で嘘をつく(冗談を言う)ことであれば、今回の虚偽表示は誰かを巻き込んで嘘をつく事です。
イラストのように、Aが借金返済のために土地を売る必要がある!という場合に、Bに売った事にする…というのが仮装譲渡です。
この場合、虚偽表示による意思表示は当事者の間では無効になります。
お互いに嘘の意思表示をしていることを知っていますので、買主が所有権移転登記をしていても無効です。
第三者と転得者・善意と悪意
当事者の間でおさまっていれば、話はここで終わりなのですが、虚偽表示により土地を所有した買主が第三者に売却したとします。
この場合、相手が悪意であれば売主は対抗することができます。
虚偽表示を知っていて契約をしているので、悪意の第三者は保護されない!という事なのですが、さらに転得者がいた場合は結論が変わります。
転得者が善意である場合、仮に間に悪意の人がいても保護されるのは転得者です。
では、善意の第三者に売却していた場合はどうなるか?ということですが、この場合は善意の第三者が保護されますので、売主は対抗することができません。
虚偽表示をした当事者より、それを知らなかった第三者を保護する!という考え方なのですが、さらに悪意の転得者がいた場合はどうなるでしょうか?
この場合は、最終的な取得者が悪意であっても、善意の第三者が間にいますので、売主は対抗ができない!というのが結論です。
転得者が悪意なのに…と私も最初は思いましたが、第三者が善意なので権利が確定している、と覚えました。
当事者?対抗?ここでいったん整理
日頃あまり使わない言葉が出てきましたので、こちらのイラストで一度整理してください。
錯誤
錯誤の基本的な考え方
錯誤とは簡単に言えば勘違いの事です。
勘違いでも契約は契約だろ!と考えるかもしれませんが、勘違いさえなければ契約をしなかった・・・という人は保護されるというのが基本的な考え方です。
例えば土地を複数持っていて、上記のように、五反野(東京都足立区)の土地を売るつもりで五反田(東京都品川区)の土地を売ってしまうと言い間違っている場合です。
これは意思表示に錯誤がありますので、取消ができます(錯誤による取消を行うのは表意者で、表意者が錯誤を認めず、意思表示を取り消す意思がない場合は、相手方や第三者は取り消すことができません)。
表意者に重大な過失があれば取消できない
錯誤があった時には保護されますが、重要な過失があった場合はどうでしょうか?勘違いしたからやーめたが頻発していたら、世の中の取引は成り立ちません。
そこで表意者に重大な過失があった場合は、2つの例外を除いて取消ができません(=相手方を保護する)。
取消ができる1つ目は相手方が表意者に重大な過失がある事を知っていた(悪意)、または重大な過失があり知らなかった場合です。
そして2つ目は相手方が表意者と同じ錯誤に陥ってた時です。
動機の錯誤
イラストを見て頂けると分かりますが、これは買うものと意思表示が同じです。
一見普通の売買に見えますが、リニアが通る土地というのが買う理由であり、これを動機の錯誤と言います。
この動機の錯誤は原則取消ができません。
これはある意味当たり前で、動機=人の頭の中までは読み取れませんので、買った後に、「買う理由を勘違いしてからやーめた」では世の中の取引が成り立ちません。
これが原則なのですが、例外は動機が表示されていた場合で、取消ができます。
動機の表示方法については、明示的(書面や口頭)もしくは黙示的(行動や周囲の事情などから一定の表示行為があったものと判断できる)のどちらでもかまいません。
間違えた!第三者がいる場合はどうなる?
この2人だけで話が終わっていれば、ここまでなのですが、第三者(あるいは転得者)がいて、その第三者が善意・無過失であった場合は取消を主張できません。
錯誤(勘違い)という失点がある人と、善意無過失の第三者のどちらを保護するか?ということであれば、善意無過失の第三者!ということです。
詐欺
詐欺の基本的な考え方
詐欺という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、詐欺とは人をだますことです。
詐欺による意思表示は有効ですが(無効ではないことに注意)、取消すことができます。
だまされた!第三者がいる場合はどうなる?
売主・買主など当事者同士で完結すれば、話が早いのですが、ややこしいのは第三者がいる場合です。
例えばイラストのように売主Aは詐欺師である買主Bと売買契約を結び、その後買主B(詐欺師)が第三者であるCと売買契約を結んだとします。
この結論はどうなるかと言えば、第三者Cの状況によって変わります。
第三者であるCが善意(詐欺の事実を知らない)かつ無過失(不注意などない)であれば、AはCに対して詐欺による契約の取消を主張できません(図では対抗できないと表示しています)。
そしてこれは詐欺師が売買契約の仲介をした場合も同様ですので、上のイラストを参考にしてください。
強迫
強迫の基本的な考え方
強迫とは、人をおどすことです(イラストを見ても恐っ!という感じですね)。
強迫による意思表示は有効ですが(無効ではないことに注意)、取消すことができます。
おどされた!第三者がいる場合はどうなる?
この場合、強迫による意思表示の取消しは、第三者が善意無過失でも、悪意でも対抗できます。
詐欺と比較して欲しいのですが、詐欺と比べて強迫は手厚く保護されています(というより詐欺には冷たいという言い方が適当でしょう)。
意思表示は権利関係の初期に勉強しますので、私も「そうなのか!」と不思議だったのですが、「だまされる」と「おどされる」を比較すると、だまされるはおどされるより本人に非がある…と覚えました。
イメージとしては、二次会の店を探していたら、片方はおいしそうな話にのった=だまされる、片方は無理やり連れていかれる=おどされる…です。
そしてこれは第三者の強迫によって契約がなされた場合も同様ですので、上のイラストを参考にしてください。
まとめ
比較して覚える事が本番で役に立つ
これまで心裡留保~強迫までをとりあげてきましたが、そのまとめです。
これらを踏まえて問題を解けば、あとはどんどん問題を解けば意思表示は本番でも点数がとれるようになります。